2024年秋に現行の健康保険証を廃止し「マイナ保険証」に一本化する問題は、地方の開業医や自治体関係者を取材すればするほど、保険証をなくしてしまうリスクの大きさに気付く。
マイナ保険証の本人確認作業の照会先の一つとなる「J-LIS」(地方公共団体情報システム機構)の住民基本台帳ネットワークシステムの情報がすべて正しいのかどうかだ。総務省によると、全国約1700強の全自治体が接続し、情報を入力している重要なシステムだ。
結論から言うと「人の作業なのでヒューマンエラーは捨てきれない」(6月20日、立憲民主党の国会内ヒアリングで総務省担当者)。
関西地方の市職員は「J-LISの情報に間違いがあるかないかと聞かれたら、そりゃあります。自治体の基幹システムに入力するときに、生年月日とかの間違いは。年に数件程度。すぐに気付いて修正することもあれば、10年以上、そのままのこともあります」と話す。
マイナ保険証では、転職後、古い保険者(健康保険組合など)情報の更新が遅れ、新しい保険組合の資格が有効なのに「無効・該当なし」のエラーが頻発
被保険者が転職・退職、結婚など人生のライフステージに伴い、加入する保険者や加入形態が切り替わるたびに発生しうるトラブル
頻繁に医療機関を利用する高齢者、障害者、難病患者への配慮はないに等しい。
同庁はマイナカードに情報をひも付けする業務を直ちに停止し、問題点の洗い出しに着手すべきだが、そうした動きにはなっていない。
誤登録は全国に広がり、新たに埼玉県所沢市で行政からの公金が別人の口座に振り込まれる事案が判明
政府は、誤登録解消に向けて実務を担う全国の自治体に総点検を指示したが、膨大な作業が予想される。自治体側は不満を募らせており、全国知事会は負担軽減を求める要請書を政府に提出した。
河野氏は現行保険証の廃止理由の一つに「なりすまし被害」を挙げるが、厚生労働省の統計では、不正利用は全国で年平均十件程度にとどまる。
政府は現行保険証の廃止後も最大一年間は猶予期間を設けるとしているが、保険資格が変わった場合などは、マイナ保険証に切り替えざるを得なくなる。
廃止撤回こそ最善の選択だ。秋の臨時国会で法改正し、制度の抜本見直しに着手すべきである。
- 聞いてるか? 担当大臣。ブロック好きのチキン野郎。