2021年4月、衆院法務委員会の参考人質疑で、柳瀬氏はそれまでに担当した件数は「2000件以上」「2000人と対面でお話ししております」と発言している。一方、今年2023年4月13日、朝日新聞の取材には「難民認定すべきだとの意見書が出せたのは約4000件のうち6件にとどまる」と答えており、わずか2年間に審査件数が2000件増加したことをうかがわせた。
この点についてD4Pから柳瀬氏に直接問い合わせたところ、2年間で自身が担当したのが2000件に及んだことを認めた。つまり、年平均1000件だ。
一方、4月21日に衆院法務委員会で、参考人として招致された一橋大学大学院社会学研究科准教授の橋本直子氏は「どこの国から来たかというだけではなく、その個人が迫害を受けるかどうかが重要。平和的に見える国から逃れてくる人もいる」と述べ、個別具体的な背景の複雑さに言及している。
入管庁によると、2022年、この二次審査による処理数は4740人だ。もし柳瀬氏が年間1000件を担当したならば、彼女(の班)のみで、5分の1以上を処理していたことになる。2022年8月1日の時点で、参与員は118名いたにも関わらず、だ。この異様な偏りこそが「おかしなこと」ではないのか。
入管法政府案は多々人道上の問題を指摘されているが、そのひとつが「送還停止効」に「例外」を設けることだ。難民申請中は送還されない現行制度を「改定」し、審査で2度「不認定」となった申請者については、3度目の申請をしても、強制送還の対象にしようというのだ。日本の難民認定率は極めて低く、何度も申請を繰り返さなければならないのが現状であるにもかかわらず、だ。
《入管として見落としている難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません」「難民の認定率が低いというのは、分母である申請者の中に難民がほとんどいないということを、皆様、是非御理解ください。》 (――2021年4月、衆議院法務委員会参考人質疑での柳瀬氏の答弁)
つまり2005年5月から2021年4月までに「会った」2000人の中で、難民をほぼ見つけられなかった、という柳瀬氏の主張が、現在審議されている入管法政府案の「根拠」とされている
柳瀬氏は2021年4月の参考人質疑で「2000人と会った」と発言している。仮に第2回の会議録の数字に立脚して考えたとしても、2019年11月から2021年4月までの1年半弱の間に、500人近くもの対面審査を行ったことになる。平日毎日1~2人の対面審査をしなければならないはずだが、全難連がアンケート調査を行った日弁連推薦の難民審査参与員の1件あたりに要する平均時間(記録検討時間、口頭審理立会時間、評議時間、意見書起案時間等を含む)は5.9時間だった。「丁寧な審査」を心がけるのであれば、柳瀬氏の「1年半で500人の対面審査」にも大いに疑問符がつく。
「もし出稼ぎできているなら私は日本には来ていません。なぜ分かってくれないのですか」
— 𝐄𝐌𝐈𝐋 (@emil418) 2023年5月25日
日本で生まれたラマザンさんの妹さんにはいまだ在留資格が下りていない。
(2023.5.25参院法務委員会)#入管法改悪反対 pic.twitter.com/Ugk3HZIqrx