- 一番大切なのは、「オーバースティ状態で入管に収容されていましたが、裁判において有罪の確定判決を受けたわけではなく、「罪人(受刑者)」ではありません」というところ。差別主義者共は、「罪人を閉じ込めて(送還して)何が悪い」と口を揃える。そんなことはないのである。
日本維新の会の梅村みずほ議員が、5月12日の参議院の本会議等で、以下のように発言しました。
「よかれと思った支援者の一言が、ウィシュマさんに『病気になれば仮釈放してもらえる』という淡い期待を抱かせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況へつながったおそれも否定できない」
この発言は「大炎上」しましたが、梅村議員は16日には参議院法務委員会において「ハンガーストライキによる体調不良によって亡くなったのかもしれない」などとさらに激しい言葉を浴びせました。
翌17日、維新の音喜多政調会長は「問題提起として間違ったことをしたとは思っていない」として擁護。だが世論の批判が高まったことに危機感を覚えたのか、18日になるや突然手のひらを返し、「ウイシュマさんのご家族らには、不適切な発言で深くお詫び申し上げる」と謝罪しました。
名古屋入管の調査報告書の記録によると、ウィシュマさんの入管収容時の令和2年8月20日の身長は158cm、体重84.9kg。お亡くなりになったときは、69.9kg。もっとも体重が減少した2月23日は65.5kgでした。私が医師としての目で動画を見ても、やせてがりがりの骨と皮の状態ではありません。
あの動画・調査報告書のどこをどう見れば「ハンガーストライキによる体調不良によって亡くなった」と思えるのか。梅村議員は、動画や調査報告書をきちんと見てはいないのではないかとの疑念を持っています。
血圧、脈拍はほぼ毎日測定されているのですが、全体に脈拍が安定せず120以上の頻脈もままあります(調査報告書 別紙5)。脱水を含む循環機能の障害までもが疑われます。動画や調査報告書をきちんと読めば「詐病の可能性」などないことは明らかです。
ウィシュマさんはオーバースティ状態で入管に収容されていましたが、裁判において有罪の確定判決を受けたわけではなく、「罪人(受刑者)」ではありません。重罪を犯しているわけでもなく、入管施設は自由を奪う等の刑罰を与えるための刑務所ではありません。
出入国管理及び難民認定法第61条の7も《入国者収容所又は収容場(以下「入国者収容所等」という。)に収容されている者(以下「被収容者」という。)には、入国者収容所等の保安上支障がない範囲内においてできる限りの自由が与えられなければならない。》としています。
自由に人と会うことは重要な人権の一つであり、よほど具体的な逃亡の恐れがある状況でもないかぎり、入管施設で面会できる人を制限するのは、憲法31条他国内諸法令や、国連自由権規約他、日本が批准して遵守しなければならない諸条約に違反すると思われます。
要するに梅村議員のみならず、音喜多政調会長も、入管施設や収容者の法的位置づけ、人権保障の在り方について碌な知識もないまま、不当に人権を制限し、諸法令、諸条約に反する疑いの高い思い付きの提案を「問題ない」としていたと感じます。