- 12年間介護でヒーヒーいっていたとき、介護保険をはじめとする、介護関連の公的サービスははっきりいって、まったく役に立たなかった。例えば、ケアマネージャーの方はできる限り一生懸命やって下さったが、介護対象である母親は両腕が効かず字が書けなかったため、毎日のように「書類のサインが必要ですので」と実家に呼びだされた。仕事で実家に行く時間がないから、ヘルパーさんをお願いしているのに、毎日呼びだされたら意味がない。例えば、国は介護の世界に外国人を迎え入れようとしているが、そんなものの破綻は目に見えている。私の母は外国人の方を怖がり、絶対に玄関のドアを開けようとはしなかった。その度に、私の電話が鳴るわけだ。
- 現実にはほとんど役にたたない介護施策だが、その後よくなったという話もきかない。どちらかというと、悪くなっているようだ。その理由の一つは、介護を経験する人とそうでない人がいるからだと考える。親がどうなるかなんて運だ。私の場合、母一人子一人で、母が難病になった。これは運が悪かったわけだが、皆が皆そうとは限らない。一生、介護を経験せずに済む人もいるだろうし、介護に苦しんで自殺する人もいる。いずれにせよ、皆が同じ経験はしない。それどころか、介護の経験をする人の方が少ないのではなかろうか。となれば、国民の総意なんて得られるわけはない。介護の経験をしない人が介護に自分の税金を差しだすはずもないのだから。
- 一人親世帯がこれだけ苦しめられるのも、同じ理由があるのではないかと思う。一人親世帯でない者に一人親世帯の苦しみは判らないし、判ろうともしない。自分たちには自分たちなりの苦労があるからだ。人の心配をしていられるほど今の日本は裕福ではない。
- そういう時に救いの手を差し伸べるのが政治であるはずだ。介護にしろ子育てにせよ、政治主導で動かさなければ良くなるはずもない。でも知っての通り、今の政治はクズだ。親を敬えと憲法に書こうとしているくらいだから、親の介護は子供がやるのが当たり前と考えている。女、子供は家長に従っていればいいという考えだから、一人親世帯のことなんて考えるはずもない。
- 死に損ねた老人と疲れ果てた中年が残り、若者の姿はどこにもない。そんな国が広がるのだろう。
現在、生活保護基準の引き下げの議論が進んでいます。
報道等によれば、12月18日に政府内での大枠の議論がまとまり、生活保護に関しては総額で160億円の削減方針が示されました。
まだ、詳細な資料は公開されていないのですが、報道によれば以下の点が大きな変更です。
・生活扶助分(生活保護の生活費分)は180億円削減(平均1.8%減)
・母子加算は20億円削減(平均19%減)
・児童養育加算については3歳未満は15000円から10000円に減額。一方で、15歳から18歳までにも適用範囲を拡大(40億円の増額)
・削減幅は最大5%にとどめ2018年10月から3年かけて段階的に新基準を適用。
削減というのはつらい話です。削減幅が数百円の人から1万円以上になる人もいますが、当事者からすれば、みな一様に生活水準を下げることを強いられます。
生活保護基準の引き下げの全体の話は下記の記事で書きましたので、今日は母子加算の話をしたいと思います。
なぜなら、今回、最も削減されてしまうのが「母子世帯」だからです。
そして、この「母子世帯」こそが、もしかしたら日本で最も生活が苦しく、かつ、支援が届いていない人たちです。
そこを支援するのでなく削減するというのはやっぱりおかしい。そのことを解説したいと思います。
(略)
先日、平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告が公表されました。
これによれば、母子世帯の平均収入は、母子のみで243万円、母子世帯全体で343万円でした。(母子世帯には「母子のみ」と「母子+同居家族」が含まれますので数字が大きく変わります)
そして、母の平均就労収入は200万円でした。
正直、平均が200万円というのは結構衝撃です。一人暮らしで200万円ならいざ知らず、この金額で自分と子どもの生活を支えるわけですから相当な苦労をしているシングルマザーが多いことがわかります。
また、母の貯金額の合計が「50万円未満」というのが39.7%もあり、収入が厳しいだけでなく、かなりかつかつな状況がわかります。
これは別な調査ですが、ひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%(2015年「国民生活基礎調査」)というデータもあり、ひとり親で、母子世帯が生活していくにはまだまだ制度や政策が足りていない、多くの世帯で日々の暮らしでも苦労をしながら何とかやっている状況がわかります。
母子加算とは何か
母子加算というのは、ひとり親世帯(父子含む)に対して、ひとり親で子育てをするにあたっての「特別な需要」に対応するために、通常の生活費にプラスして上乗せしている金額です。
現在の基準だと都心で子どもが一人の場合、約2万円ほどの金額になります。
この「特別な需要」については、2016年10月7日の生活保護基準部会での資料においては、「貧困の連鎖の防止、子どもの教育機会を確保」と書かれています。
一方、1983年12月23日中央社会福祉審議会「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」によれば、母子加算における「特別な需要」は、「片親不在という社会的・心理的障害(原文ママ)」と書かれています。
この二つは大きな違いがあります。
1983年の議論では、要するに「ワンオペで子育てすることの大変さ」についての加算である、というものが、2016年時点での議論では、「子どもの貧困対策」に変わったということです。
これが、今回の母子加算の削減に影響しています。
母子加算が削減される理由
今回、母子加算の計算方法については、「ひとり親のかかり増し費用」というものから導き出しています。
これはすごく複雑な計算をしていますが、全国消費実態調査のデータをもとに、3人(夫婦と子1人)世帯と2人(ひとり親と子1人)世帯の消費実態を比べ(ただし前者については2人世帯分に換算)、同程度の生活水準を維持するために生じる差額(つまり現実の2人世帯で余分にかかる消費額)を推計しているようです。
そして、これにより2割カットという上記の報道での数字になっています。
ここで重要なのは、消費実態をもとに導き出しているということです。(ここでの計算方法についてはいろいろ思うことがあるのですが非常に難解なのでここでは触れません)
そもそもが、1983年時点の議論のような「片親不在という社会的・心理的障害」を消費実態から導き出すのはナンセンスですし、2016年時点の議論の「子どもの貧困対策」への手当てという考え方であっても、この方法での母子加算の算出が妥当なのかどうかはわかりません。
もちろん、「母子加算」の理論的根拠を何に求めるのか、ということにつながっていくのですが。
そして、厚生労働省が、12月8日の時点でこのような複雑な試算を出し、記者レクで新しい母子加算は1.7万円と説明した(らしい)意図はよくわかりません。
このような限られたデータや多くの推計上の仮定に基づく試算値、そして、短時間の議論によって減額を決定するのであれば、それは大きな問題であるといえるでしょう。
母子加算を削減することの意味
今回の計算方法では母子加算は削減されます。5年前の引き下げに続き、ひとり親世帯の生活保護基準の引き下げ幅は母子加算も含めて大きくなることが予想されます。
基準の引き下げや加算の削減は、家計の削減です。各家庭の生活水準が、基準が引き下げられた分だけ低下します。
はたして、こんなことを繰り返していいのでしょうか。
僕が声を大にして言いたいのは、今の日本社会はひとり親家庭に対して厳しすぎやしないか、ということです。
貧困率は50%をこえ、生活保護も減額される。ただでさえ、子育てしながら頑張っているのに、社会がそれを支えようとしないのはおかしいと思います。
12月15日に生活扶助基準引き下げの全体の話を書いた時に、実際に生活保護を利用している母子家庭のお母さん何人かからメッセージが届きました。
「今でも十分ギリギリの生活なのに、これ以上下がると思うと頭が痛い。不安で押しつぶされそう」
「削れるところは何かなと考えてしまう。でも、子どもには我慢させたくない」
彼女たちの声を聞き、不安を感じなくてすむ社会にするのが政治の役割なのではないでしょうか。
引き下げることではなく、ひとり親家庭にやさしい社会にするために、国会で闊達な議論がおこなわれることを願っています