アピール:「知る権利」を奪う首相官邸の記者弾圧に抗議する
菅義偉官房長官の記者会見で、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設をめぐり、 「埋め立て現場ではいま、赤土が広がっております」と質問した新聞記者に対して、 首相官邸が「事実誤認」「問題行為」と一方的に断定し、質問制限や妨害行為を正当化 する政府答弁書の閣議決定までしました。しかし、赤土が広がっていることは現場の 状況を見れば明白であり、記者が記者会見で質問することは自然な行為です。首相官 邸の主張は、意に沿わない記者に「事実誤認」のレッテルを貼る卑劣な行為です。
記者会見は、記者が、会見場に直接足を運ぶことができない市民に代わって、様々 な角度から質問をぶつけ、為政者の見解を問いただすことによって、市民の「知る権 利」を保障する場です。それにもかかわらず、記者の質問内容にまで政府見解の枠を はめようとする首相官邸の行為は、「取材の自由」や全ての市民の「知る権利」を奪う ものであり、断じて容認することはできません。首相官邸および閣議決定に署名した 各閣僚に対し、厳重に抗議し、撤回を求めます。
菅官房長官は森友・加計学園問題で自らが誤った答弁を繰り返す一方で、その追及 にあたった新聞記者の質問を約1年半にわたって後回しにしてきました。司会役の官 邸報道室長は数秒おきに「簡潔にお願いします」と質問を妨害し、質問数も1~2問 で打ち切っていました。一方的に「事実誤認」のレッテルを貼ることを含めた一連の 首相官邸の行為は、記者に対する弾圧、ハラスメント(いじめ、嫌がらせ)です。
日本では第2次世界大戦中、政府が新聞事業令を施行するなど、報道機関や記者の 統制を計画し、準統制団体である日本新聞会を設置させるなど、自由な報道や取材活 動を大きく制限しました。この結果、報道はいわゆる「大本営発表」に染まり、取り 返しのつかない数の死傷者を出しました。二度と同じ過ちを繰り返してはなりません。
「あなたに答える必要はない」
記者会見で言い放った菅官房長官の答弁は、全ての市民に向けられた刃です。メデ ィアの現場で働く私たちは、不公正な記者会見のあり方をただちに改め、市民の「知 る権利」を奪う記者弾圧をやめるよう、首相官邸に強く求めます。
2019年3月14日 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC) 官邸前行動参加者一同