1月28日、衆院予算委員会。馬場伸幸衆院議員(日本維新の会)は緊急事態条項の必要性を訴えた上で、こう述べた。
「どういう緊急事態が起これば、どういう発動がされるのか、何のためにされるのかということはね、国民は全然分かってないと思うのですね。(略)ですから、こういう新型コロナウイルスの問題はまさしくいい『お手本』。国民にとっては大きな不安ですけれども、我々この政治を預かる者にとってはですね、非常にいい『お手本』ではないかなと」
1月30日に伊吹文明・元衆院議長が、所属する自民党・二階派の会合で語った。前日には、中国・武漢からのチャーター機第1便で帰国した日本人2人が、ウイルス検査を拒否していた(その後受診し陰性と判明)。
伊吹氏は「新型コロナウイルスによる肺炎が感染症と検疫法上の指定を受けるまでの間は、(法的な強制力がないため)同意を得ないと検査ができない」などと指摘し、こう続けた。
「これは憲法改正の大きな一つの『実験台』と考えた方がいいのかもわからないね。もちろん朝鮮半島で有事があって、難民が大量に押し寄せてくるとか、日本の米軍の基地が攻撃されるとか、東日本大震災のような大災害から比べれば、程度は少し低いかもわからないけれども、公益を守るために個人の権利をどう制限していくかという緊急事態(条項)の一つの例としてね」
自民党の松川るい参院議員は1月30日、自身のツイッターでこう述べた。「(参院)予算委では、新型コロナウイルスについて指定感染症の施行を早めるべきとの声が相次ぎました。憲法に緊急事態条項があれば!」
「まずは法律での対応の可否を検討し、無理なら憲法解釈の余地がないかを議論する。そして最終手段として憲法改正に入るというのが常識的な手続きです。『実験台』『お手本』という発言は『憲法改正ありき』という本末転倒の考えが根底にある証拠です」
「大規模災害で市民が求めるのは避難所でのプライバシーや衛生状態の確保、仮設住宅に断熱材が入っているかどうかなど、生活に即したことばかりで、緊急事態条項ではありません」
1月29日に武漢から帰国した日本人2人がウイルス検査を拒否した。政府はその前日に、新型コロナウイルスによる肺炎を感染症法に基づく「指定感染症」と検疫法による「検疫感染症」に指定する閣議決定をしていたが、29日時点ではまだ指定感染症ではなかったことなどから、2人に対して検査などの強制的な措置を講じることができなかった。
「政府がもっと早く閣議決定していればよかっただけの話です」と永井氏は言う。「武漢などの封鎖令は緊急事態条項が発動されたと考えていい状態です。しかし、感染が大幅に減ったわけでもなく、経済的なダメージが大きくなっています。市民の自由を制限しても感染の拡大防止にはほとんど役に立たないことが証明されたのでは」
「緊急事態条項の話を持ち出すなんてとんでもない。他にやるべきことがあります」