Muho’s diary

小説などを書いている大倉崇裕のオタク日記です。

小説などを書いている大倉崇裕のオタク日記です……が、最近は吠えてばかりです。見苦しくて申し訳ありません。でも、いま日本を支配している政治家とその一派の方が遙かに見苦しいでしょう? ちなみに、普通の日常はこちらです。https://muho2.hatenadiary.jp

改憲「家族助け合い」は弊害も(2016年7月の毎日新聞より)←いや、弊害しかないだろう

自民党が2012年に公表した憲法改正草案では、24条に「家族は、互いに助け合わなければならない」との義務が加わった。現行24条の「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」から「のみ」の2文字を削除。前文でも「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」と規定し、個人の尊重を重視する現行憲法から「家族の尊重」にかじを切っている。国民の義務も大幅に増え、国家権力や公務員らを縛る最高法規としての憲法の性格自体が変えられている。
日本国憲法は1946(昭和21)年10月に衆議院で可決された。24条の審議過程では「国体の根本になる親子の忠孝を規定すべきだ」という趣旨で「家族生活はこれを尊重する」と追加する修正案も出たが、否決されている。現行憲法の成立に伴い、旧民法の戸主・家族規定が消えた。家長の同意がないと結婚できず、妻には財産の管理権がない「家制度」は廃止された。
夫婦別姓を選択できず、女性だけ離婚後6カ月の再婚禁止期間を定めた民法違憲性を巡る訴訟では、憲法24条に反するかどうかが争われた。

これに対し、「戦後、家族の絆が薄くなった」と改憲運動を繰り広げているのが、安倍政権に近いとされる保守系団体「日本会議」。24条を「近代家族を崩壊させる要素を含んでいる」と問題視し、民法婚外子相続分差別規定を違憲とした最高裁決定(2013年9月)を「日本の結婚制度を根幹から揺るがす」と非難する。
 系列団体は「両性の合意のみで成立した結婚は気軽に破局を迎えやすい」事実婚夫婦別姓を認めるスウェーデンは犯罪王国」などとPRし、各地でのイベントで「選挙では女性の方が投票率が高い。大阪都構想住民投票でも女性票の取り込みが結果を左右した」と呼びかけ、女性の支持拡大を目指している。
 日本会議政策委員の百地章・日本大教授(憲法学)は「現憲法では親、子、孫と続く家族共同体の大切さがないがしろにされている」と主張する。夫婦別姓には「家族の連続性が失われる」と反対し、自民党改憲草案を「世界人権宣言の精神や民法の扶養義務を整理して表現している」と評価。専業主婦が福祉に果たしてきた役割を重視し、「国は女性の社会進出だけではなく、家庭内で育児、介護する家族を支援すべきだ」と訴える。3世代同居可能な住宅を建てた人に補助金を出す安倍政権の政策に関しても「憲法に規定があれば、こうした施策が進むのでは」と歓迎する。

公助から自助へ
 04年にも自民党憲法改正プロジェクトチームが「両性平等の規定は家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきだ」と提言している。右派運動に詳しい山口智美・米モンタナ州立大准教授(人類学)は「日本会議夫婦別姓男女共同参画を『性差を否定する』『日本の伝統を破壊する』と激しく非難してきた。24条改憲は運動の核心部分だ」と解説する。憲法の制定過程に詳しい角田由紀子弁護士は「現行の24条の根底には、女性が個人として尊重されるには戦前の家制度から脱却し、夫婦・親子が平等な家庭を実現すべきだとの発想があった」と指摘。婚外子相続分差別違憲決定を受けて自民党内から「法律婚を保護すべきだ」という意見が出ていることや、法務省が配偶者の遺産相続を手厚くする民法改正案を検討していることを「男女の法律婚以外の家族形態を排除する姿勢は明らか」と警戒する。

 「世界人権宣言にある『国家は家族を保護しなくてはいけない』という条文が、自民党改憲草案にはない。保育園整備も国家による家族保護や社会保障の一環なのに、改憲草案では国による保護はなく、家族の助け合い義務が追加されている」と問題提起するのは、三浦まり・上智大教授(政治学)。格差が拡大し、貧困で家族を支えるのが困難になる人が増える中、国家が「理想の家族像」を示すことで、介護や生活困窮者の扶助を社会福祉から切り離し、家族に押し付ける結果を招くのではないか。哲学研究者の能川元一氏は「社会保障費削減の意向と改憲派の発想は結果的に一致している。家族条項の改憲は、『健康で文化的な最低限度の生活』を保障する25条にも影響を与えかねない」と指摘する。

 生活保護法では、14年の改正で民法上の扶養義務者に対し収入報告を求めることが可能になっている。東京都内のケースワーカーの女性(28)は「支給のハードルが一層上がるのではないか」と恐れる。シングルマザーを支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長も「ひとり親家庭婚外子への社会的支援がさらに狭められる恐れがある」と話す。介護保険でも要支援者や要介護度が低い人に対する「公助」がカットされ始めたことから、「家族や地域に責任が投げ返されている。『自助』を強調する流れは既に始まっており、24条改憲と軌を一にしている」と危機感を強めている。