Muho’s diary

小説などを書いている大倉崇裕のオタク日記です。

小説などを書いている大倉崇裕のオタク日記です……が、最近は吠えてばかりです。見苦しくて申し訳ありません。でも、いま日本を支配している政治家とその一派の方が遙かに見苦しいでしょう? ちなみに、普通の日常はこちらです。https://muho2.hatenadiary.jp

NHKは加計学園問題での“大本営発表”を止めなさい

  • 渡辺輝人氏のブログ(https://news.yahoo.co.jp/byline/watanabeteruhito/)より。
  • 私がNHKに憤るのは、身内の晩年が、「NHKを見ることだけがすべて」だったからだ。身内は寝たきりで、両手がきかない。自力でチャンネルを変えることもできなかったし、番組表を見て見たいものを選ぶこともできなかった。朝、NHKをつけてもらい、夜、寝るまでNHKを見ていた。本人はそれで不満はなかったようだが、そういう人は全国に多くいると思う。そうした人に、偏向とまでは言わないまでも、不誠実極まりない報道で情報を与えつづけるのは、本当に酷い話だ。
  • 私は毎日、NHKに意見をつづったメールをだしている。あまりだし過ぎると、何かを妨害したとかいちゃもんをつけられそうなので、ほどほどにしようと思うが、NHKとは、本気で戦いたい。むろん、受信料をちゃんと払ったうえで。
  • 受信料を徴収して運営している公共放送が、自分の頭で何も考えず意見も言わなくなったら、おしまいだし、ちょっとした詐欺みたいなものだろう。ふざけんなと言いたい。

学校法人加計学園岡山理科大学)が愛媛県今治市に新設予定の獣医学部の新設をめぐり、文部科学省の内部文書とされる文書に内閣府の発言として「総理のご意向」「首相官邸の最高レベルが言っている」などと記されていた問題について、昨日、今年の1月18日に職員の天下り問題で引責辞任した前川喜平・前文部科学次官が当該文書を「本物」と証言し、同様の説明を担当部署から説明を受けた旨も証言しました。文書が本物ということになれば、規制緩和をするための「国家戦略特区」が、安倍首相自ら「腹心の友」とする人が代表者を務める学校法人への縁故主義の場になっていた可能性が出てきて、中立公平であるべき行政を正に歪める事態が発生していたことになります。
これに対する首相官邸の対応は、菅官房長官が昨日の午前、午後の記者会見で「文書の存在を確認できない」などという従前の説明を繰り返しました。菅官房長官の午前中の記者会見の該当部分については、昨日の拙稿「『安倍首相の意向』文書につき菅官房長官の記者会見をチェックしてみる」で文字起こしし、コメントも付しましたので、そちらをご覧下さい。
それにつけても、昨日来、NHKが非常に偏った報道をしているように思えてなりません。昨日、NHKは菅官房長官の午前中の記者会見の内容を元にして2本のニュースを発していますが、その内容が余りに偏向しているのです。以下、具体的に検討します。

「文書は本物」の証言 文科相「コメントする立場にない」(5月25日 12時18分)というニュースについて
この問題をめぐる昨日の政府の対応は、午前中の菅官房長官の記者会見で「確認できない」という従前の答弁を繰り返しました。しかし、確認すべき職員の個人のパソコンを確認せず、数名の職員から事情聴取しただけで、網羅的な調査をしていないことがすでに判明しています。記者会見に参加したマスコミの記者からは、何故再調査をしないのか、厳しい質問が飛び交いました(上記拙稿参照)。菅官房長官は質問で追い詰められると、最後は「文科省が適切に対応する」と旨を三回も述べています。
しかし、ほぼ同時刻に行われていたと思われる参議院文教科学委員会で、松野文部科学大臣は前川前次官の証言について「すでに辞職された方の発言であり、文科省としてコメントする立場にない」と答弁したのです(朝日5.25「文科相「コメントする立場にない」 前川前次官の証言」)。
つまり、政府は、一方では官房長官が「文科省が適切に対応」といい、一方では文部科学大臣が「コメントする立場にない」と、国民を欺く答弁をほぼ同時刻にしていたことになります。
ところが、この件を報じたNHKのお昼のニュースは、政府が国民に対してこのような二枚舌を使っていたことを一切報じていません。また前川氏の証言について「一部の報道」などと矮小化していますが、前川氏の証言は刊誌・全国紙・全国ネットのテレビ放送などで流れており、むしろ、一部の報道以外では大きく取り上げられています。菅官房長官の記者会見の内容について報じながら、「文科省が適切に対応する」旨、三度も述べたことに全く触れず、一方で、実際の地上波の放送では、文書を確認できなかったことを「重ねて強調」という字幕がついた、という指摘すらあります。
我が国の文部科学行政のトップにいた人物が、自らのトップ在任中のことを詳細に証言したのに、政府は「確認できない」と言っているだけで、前川氏が「本物」と証言する文書が虚偽だと述べたことは一度もありません。このような状況で、政府の言い分を垂れ流し、かつ、国民に対する二枚舌の事実を指摘しないのは公共放送としての役割を果たしているのでしょうか

獣医学部新設 鳩山内閣で実現に向け検討開始 政府(5月26日 4時22分)というニュースについて
また、25日の午前中の記者会見では、菅官房長官が「民主党政権の間にも、七回にわたって要望があり、それまで対応は不可とされてきた措置を、平成21年度の要望以降は、実現に向けて検討、と民主党政権でも格上げをされております。そして、それを、安倍政権が更に前進をさせて実現された。これが事実であります。」と述べた(上記拙稿参照)ことを捉えて、まさに「右から左へ」上記タイトルのニュースを報道しました。その際、午前中の菅官房長官の発言、松野文部科学大臣の発言のうち、政府に都合の良い部分だけ切り取って流しています(NHkのサイトの動画では聞けますが、文字化はされていません)。まるで、加計学園岡山理科大学)の獣医学部新設について、民主党が積極的に関与していたかのような印象を与えます。しかし、民主党政権の時に「実現に向けて検討」と格上げされたことについて、具体的にどのように検討されたのか菅官房長官は何も述べておらず、NHKも検証していません。
しかし、そもそも、愛媛県今治市加計学園を主体と想定して獣医学部規制緩和の申請をしたのは平成19年10月15日から11月14日の間のことです(政府HP参照)。これは同年8月27日に、安倍首相の「政権放り出し」とも評された突然の辞任により、第一次安倍政権が崩壊したわずか1ヶ月半後の福田政権(注:訂正しました)の時代の話です。なお、その直前の6月の特区申請には、麻生グループの法人や、加計学園の別の大学についても申請がなされています。
そして、この規制緩和はそれ以降、民主党政権の期間も含め、15回にわたり申請されても採用されなかったところ、第二次安倍政権発足後、内閣府の助言により、愛媛県が「国家戦略特区」の枠組みに切り替えて申請を行い、2017年1月20日の同特区の諮問会議(議長は安倍晋三首相)により、実現の方向が確認されたのです(議事録は政府HPで閲覧可能)。この諮問会議は、前川前次官が辞任したわずか2日後のことです。

安倍首相は、諮問会議終了後の記者会見で以下のように述べています。
獣医学部が、来年にも52年ぶりに新設され、新たな感染症対策や先端ライフサイエンス研究を行う獣医師を育成します。新しいカリキュラムなどを通じて、各大学や教育制度全般に良い影響を与えることを期待します。皆様の御尽力に改めて敬意を表します。

文科省側が難色を示した部分であり、文科省の内部文書とされる文書で、内閣府が「総理のご意向」としたとされる事項を、安倍首相自身が言及しているのです。このように、この件は、当初の申請時も、実現時も自民党政権のときであり、客観的な時系列では、安倍首相との関連性が濃厚です。このような課題について「民主党も関与していた」という菅官房長官の一方的な言い分を、何の検証もなく報道するのは、やはり、公共放送としての役割を果たしているとは言えないでしょう。

NHKは放送法を忘れて大本営発表の時代に戻る気か
放送法4条1項は以下のように規定しています。
一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
二  政治的に公平であること。
三  報道は事実をまげないですること。
四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

しかし、昨日来のNHKだけを見ても、一大スキャンダルに発展する可能性がある問題について、政府の見解を、何の検証もせずにまさに「垂れ流す」報道が繰り返されています。戦時中の大本営発表すら彷彿とさせます。NHKは、このような態度を改め、政治的に公平で、事実を曲げない、多角的な論点を明らかにした報道をすべきでしょう。

追記(2017.5.26)
今日の午前の菅官房長官の記者会見をNHKがどう報じたのか、さらに文字起こしして分析しましたので、こちらも合わせてどうぞ。

さて、午前中に「NHKは加計学園問題での“大本営発表”を止めなさい」を投稿した行きがけの駄賃で、今日(5月26日)の午前中の菅義偉官房長官の記者会見がNHKでどのように報じられたか検証します。まず、菅官房長官の今日の記者会見については以下の指摘が可能だと思います。
前日と同様、前川氏の証言を受けた政府の対応を聞かれているのにそれより前の調査結果をもとに「調査は適正」「文書は確認できず」「出所不明」「信憑性」と答える。
前日と同様、政府の調査は適正と答える。
前日と同様、文科省が適切に対応する、と答える。
前日と同様、野党から求められた前川氏の参考人招致ないし証人喚問の必要性について政府の見解を答えない。
民主党の関与の部分、前川氏の「出会い系バー」をめぐる事実関係には前日より詳しく答える。
以下、書き起こしをまとめて掲載します。昨日から情報が付け加わった部分を太字にしました。
(2:13〜)
記者:イノオ?です。加計学園の関連で伺います。あの、昨日文科省の前次官の前川氏が記者会見し、「総理のご意向」などと書かれた文書について、在籍中に共有していた文書で確実に存在していたと述べました。長官の昨日の会見でも「信憑性は定かでない」というふうにお述べになっておられましたけれども、こうした認識にお変わりないでしょうか(2:29)

菅:あの、全く変わりません。いつも申し上げていますように、八つの文書について、出所不明なものであり、えー、信憑性も欠けている。えー、その点は昨日の会見があっても変わりません。また、その、私その内容について、内閣府に聞いたところですね、文書にあるような、官邸の最高レベルが言っているとか、総理のご意向とか、こういうことを言った事実はないし、総理からそういった指示も一切受けていなかったということです。その中に私の部分、また、私の補佐官についての部分も言及されていますけれども、全く事実と異なっている。こいうふうに思っています。(3:05)

記者:関連で、朝日新聞のイノオ?です。あのまあ、政権側が信憑性を疑問視、否定される一方で、直近まで文科行政の事務方トップだった方が文書の存在を認めるという構図になっておりますけれども、こうしたことで、国民の政治への信頼に影響を与えかねない懸念もあるかと思いますが、文書の再調査の必要性についてはどうお考えでしょうか。(3:24)
'''
菅:'''あの、これについてはですね、あのー、昨日の前川さんの会見では、担当課から受けてた文書と言っておりますけれども、文部科学省の調査では、担当課の職員にも聴取を行った結果、該当する文書の存在は確認できなかった、と、まあ聞いております。いずれにせよ、文科省において適正に考える、というように承知しております。(3:50)

記者:関連で、朝日新聞のイノオ?です。あの、会見の中で、前川氏は、あの、国家戦略特区の獣医学部を新設する計画をめぐって最終的に内閣府に押し切られた、極めて薄弱な根拠の下で規制緩和が行われた、行政が歪められたなどと述べられておりましたけれども、こうした指摘については改めて、行政が歪められたという指摘はどうお考えでしょうか。(4:11)

菅:まず、全く当たらないちゅうことでしょね。是非、国家戦略特区について、まあ、ご理解いただきたいと思いますが、国家戦略特区というのは、過去何年も手が付けられなかった規制の岩盤ドリル(註:ママ)を風穴を開ける制度であります。総理の特区では、スピード感を持って規制改革を進めるべき、とのご指示の下に、地域のジエイタイ(註:自治体か?)や業者に真摯に耳を傾けて、できるだけスピーデーに実現をすべく、内閣府が、制度を所管する関係省庁と厳しい折衝を行って、議論を深めていくのは、これは当然のこと、ちゅうに思います。また、今回の獣医学部新設に関わる手続においてもですね、国家戦略特区法に基づいて、行政が歪められたとの指摘は全く当たりません。そもそも、この獣医学部新設は、今治市が平成19年、これは福田政権の時です。これ以降15回続けて愛媛県と共同で構造改革特区を活用して、提案を行って、提案の当初から、加計学園が候補として記載されていましたけれども、実現に至らなかったものであります。実は民主党政権の間も、7回にわたって要望があり、平成21年11月の今治市愛媛県の特区提案は、大学設置母体は学校法人加計学園と、これは記載がされております。これをうけて、民主党政権の中で、それまでは対応不可とされてきた措置を、平成21年度の要望以降は「実現に向けて速やかに検討」、こういうふうに格上げされているのは民主党政権なんです。こうしたことから、民主党政権における措置の変更は、大学設置母体は学校法人加計学園であると、そのことを踏まえたものであるということが、明らかじゃないでしょうか。これは明確になっています。こうした経緯もあって、民主党の高井議員がですね、昨年4月26日の国会審議で、四国に獣医学部が一個もない状況に鑑み、国家戦略特区の実現を要望していた、こういうことも国会で質問されているんじゃないでしょうか。また、今治市は、今治市新都市開発に着手した昭和58年、いわゆるこの、加計学園による獣医学部構想の誘致を決める前から、今回、無償譲渡とする土地を、高等教育施設用地として、位置づけて、歴代の市長が大学誘致を目指し、市議会も将来的に市が土地を購入することを平成12年、平成19年、平成20年と、これ三回も議決をしているわけであります。正に、構造改革特区というのはですね、国家戦略特区というのは、こうした岩盤規制、まさに、抵抗するそうしたものに風穴を開ける訳でありますから、それは、国家戦略特区諮問会議、そこで決まったことを基に、内閣府は、そりゃ厳しく、規制する官庁と、そりゃ、侃々諤々の大議論を行う。これが当たり前のことじゃないでしょうか。ですから、法律に基づいて行っていることであり、歪められた、全くありません。(8:09)

記者:朝日新聞のイノオ?です。前川氏は証人喚問に応じる姿勢を示されてまして、野党も証人喚問を求める意向のようです。国会で判断することではありますけれども、問題を明らかにする上ですね、証人喚問の必要性については、政府としていかがお考えでしょうか。(8:24)

菅:それは国会で決めることでしょう。(8:27)

記者:あの、前川氏は昨日会見では、出会い系バーに通っていたことが明らかにされまして、前川氏は会見で、杉田副長官から注意を受けたとお述べになっておられました。まあ、長官、昨日の会見では、出会い系バーへの出入りは把握されてらっしゃらないとお述べになりましたけれども、まあ、杉田副長官からその後に報告などはあったのでしょうか。

菅:あの、私昨日申しましたけども、おー、まあ事実を把握しておりませんし、注意もしておりませんでした。まあ、昨日前川氏の会見を踏まえて、杉田副長官に確認したところ、前川氏がそういう場所に出入りしている、こうした情報を耳にし、本人に確認したところ、事実ということであったので、まあ、厳しく注意した、ということであります。そうして法律・・で、杉田副長官は、そうした報告を私、受けました。また、昨日の前川氏の会見では、女性の貧困問題の調査のために、いわゆる出会い系バーに出入りし、かつ、女性に小遣いを渡したと言うことでありますけれども(註:笑っている)、あの、ここは、さすがに強い違和感を覚えましたし、多くの方もそうだったんじゃないでしょうか。常識的に言って、教育行政の最高の責任者が、そうした店に出入りして、小遣いを渡すようなことは、到底考えられない。このように思いました。(9:55)

以降、記者会見は別の話題に移ります。

NHKはどう報じたのか

この菅官房長官の記者会見について、NHKはどう報じたのでしょうか。少し長いですが、菅官房長官の記者会見と対比する目的なので、全文引用します。
官房長官 「総理の意向」の文書は出所不明で信ぴょう性なし 5月26日 12時03分

官房長官閣議のあとの記者会見で、国家戦略特区での大学の獣医学部の新設をめぐり、文部科学省の前の事務次官が「総理の意向だ」などと記された文書は文部科学省で作成されたと主張したことについて、文書は出どころが不明で信ぴょう性が無いと重ねて反論しました。

国家戦略特区に指定された愛媛県今治市に学校法人「加計学園」が来年4月に設置する計画の獣医学部の新設をめぐって、文部科学省の前川前事務次官は25日に記者会見し、民進党が存在を指摘していた「総理の意向だ」などと書かれた文書は文部科学省で作成されたものだと主張しました。

これについて、菅官房長官閣議のあとの記者会見で、「前川氏は『担当課から受けた文書』と言っているが、文部科学省の調査では担当課の職員にも聴取を行った結果、該当する文書の存在は確認できなかったと聞いている。文書は出所不明なもので、信ぴょう性も欠けている。その点はきのうの記者会見があっても変わらない」と述べました。

また、菅官房長官は、前川氏が「行政の在り方がゆがめられたと感じている」と指摘したことについて、「手続きも国家戦略特区法に基づいており、『行政がゆがめられた』との指摘は全くあたらない」と述べました。

そのうえで、菅官房長官は「そもそも獣医学部新設は提案の当初から加計学園が候補として記載されていたが、実現に至らなかった。民主党政権の間も7回にわたって要望があり、それまでは『対応不可』とされてきた措置を『実現に向けて速やかに検討』に格上げしたのは民主党政権だ」と述べました。

さらに、菅官房長官は「前川氏の会見では、女性の貧困問題の調査のためにいわゆる『出会い系バー』に出入りし、女性に小遣いを渡したということだが、さすがに強い違和感を覚えた。教育行政の最高の責任者として到底考えられない」と述べ、前川氏を批判しました。

ほぼ、菅氏の言い分を要約しただけですね。これでは筆者が午前中に書いた「大本営」という指摘が丸々当たってしまうのではないでしょうか。また、菅官房長官は記者会見で「文科省において適正に考える」と逃げている部分が相変わらずあるのに、その発言を紹介せずに、別個独立のニュースで「文科相 文書提示されず再調査考えない」(5月26日 10時36分)を報じており、筆者が午前中に指摘した、政府のダブルスタンダードについて何の指摘もしてません。

NHkは政府を追及して文書の調査をさせるべきでは
そもそも、肝心の文書の真否について、昨日から何も変わっていない菅官房長官の会見をこのような長文の記事で紹介する意味はあるのでしょうか。
また、「出会い系バー」に行くことが、教育行政のトップの行状としてどうなのかについては、仮にそういう行状が非難されるべきと考えても、加計学園の問題とは何の関係もないでしょう。菅官房長官の記者会見は、そういう、関係のない事情をことさらに強調して、問題のすり替えをしようとしています。現状、事実として限りなく重いのは、今年の1月18日まで、我が国の文部科学行政のトップだった人物が、直前の9月から10月にかけてのこととして、文部科学省の内部で作成されたとされる文書が真正のものだ、同様の報告も受けた、と断言していることです。「出会い系バー」と、前川証言の信用性に何の関係があるのか、なぜ、記者は問わないのでしょうか。
また、当初、菅官房長官が、調査もせずに、怪文書呼ばわりしていた文書について、ザルに等しい調査をしたからといって「適正」と断じるのも、それこそ根拠のないことです。政府はこの間、自衛隊南スーダン派遣の日報を隠ぺいしたり、森友学園関係の書類を違法に廃棄したと開きなおっているので、筆者は、適正だという菅官房長官の言い分は強い違和感を感じるし、多くの方もそうなんじゃないかと思います。
官房長官が「教育行政のトップ」と認める人物が本物と断定し、証人喚問にも応じる意向を示しているのに、その証言より前に行った(1)共有フォルダのみ、(2)7人の職員のみ、(3)10〜30分の聞き取りの調査(5.23毎日社説「文科省の「総理の意向」調査 これで幕引きとはいかぬ」)で、文書について「信憑性がない」などと言うのも、それこそ、全く根拠のない話です。というか、すでに指摘されているように、財務省の佐川宣寿理財局長が国会で虚偽答弁をしている可能性が高い状態なので、(2)(3)は、もっと網羅的に、政府から独立した機関が調査してもおかしくない位のことでしょう。
今、公共放送たるNHKに求められているのは、菅官房長官(政府)の言い分を垂れ流すことではなく、政府が国民に対する説明責任を果たすよう、厳しく追及することでしょう。メディアの役割は、政権が右派だろうと、左派だろうと、監視し、矛盾を突き、不正を追及することにあるのですから。