2018年2月20日に行われた衆議院予算委員会で自民党の佐藤ゆかり氏がこう発言している。
“安倍内閣の政策のアベノミクス。経済政策は、よくトリクルダウンというふうに言われるわけでございます。私も経済のモデルをつくる側で長年仕事をしておりましたが、トリクルダウンといいますと、大きな木があって、雨が降って、そして、理論の世界であれば、このトリクルダウンの木も左右に一本ずつ枝があるぐらいの抽象化されたものでありますから、雨の水も滴りやすい、すぐに効果があらわれるということでございます。こういったものを前提として、評論家の方々もトリクルダウンはあらわれないじゃないかということをよくおっしゃるんだろうというふうに思います。
しかしながら、現実はそんなに易しいことではありません。現実の木はさまざま枝葉が茂っておりますし、そういう中で、雨がぶつかって水が散るところもあれば、下に落ちるところも出てくる。なかなか根元に水がおりてこないエリアとおりてくる場所とさまざまというのが実際のトリクルダウンの木ではないかというふうに考えるわけでございます。”
2014年11月24日に行われた記者会見での当時の内閣府特命担当大臣甘利明氏の発言も見ておこう。
“トリクルダウンがまだ弱いということです。だから、トリクルダウンを強くする。あるいは「ないんだ」ではなくて、収益を上げたところから還元していかないと、儲かっている人がため込んでいるだけで、一切外に出しませんといったら、経済の回復などあり得ない。だから、トリクルダウンを速くするという課題や、実質賃金ができるだけ早くプラスになるようにしていくなど、そういう課題が残っている。
だから、仮に消費税率引上げを延期するということになるならば、そういう本来の企業収益が賃金や下請け代金に跳ね返ってくる、これが一回は起きているわけですから、2巡目、3巡目を起こしていく、そういう時間的猶予が必要だという判断だと思います。アベノミクスが完全に失敗していたら、どこまで延ばそうと、デフレに戻ってしまいます。デフレに戻らないようにトリクルダウンをしっかりスピードを速める、実質賃金が上がっていくようにする、その時間的猶予をもらいたいということだと思います。”やはりトリクルダウンを連呼している。
『今の安倍政権がとっているのはトリクルダウンの政策だ』と安倍氏本人は一度も言ったことがないそうだが、自民党の議員や大臣、省庁がアベノミクスについてトリクルダウンという言葉を使って発信しているのは確かだ。
もしかすると、安倍氏の認識と他の与党議員、閣僚、官僚の認識とで食い違いが生じているのではないか。総理大臣が国の政策、進行方向をきちんと理解しているのか、心配である。