小説などを書いている大倉崇裕のオタク日記です……が、最近は吠えてばかりです。見苦しくて申し訳ありません。でも、いま日本を支配している政治家とその一派の方が遙かに見苦しいでしょう?

緊急事態条項こそが緊急事態

  • 緊急事態条項はやばすぎだろう。

 同党が優先的に検討しているのは、(1)9条への自衛隊明記(2)緊急事態条項の創設(3)参院選挙区の合区解消(4)教育無償化―の4項目。6~8月に議論を一巡させたが、議員の意見表明にとどまっており、2巡目以降の討議で意見集約を目指す。12日は9条、20日は緊急事態条項がテーマだ。

 

 緊急事態条項について、推進本部は他党の理解を得るため、大規模災害時の国会議員任期延長などに絞る方向。だが、党内には草案に明記された首相の権限強化の検討を求める意見もある。

 

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じつはこの「災害時の緊急事態条項の新設」こそが、9条の改定と並ぶほど危険な、別の言い方をすれば“保守派の悲願”といってもいい案件なのだ。

「災害時の緊急事態条項」とは、簡単にいえば、巨大地震などの災害が起こった際に首相が緊急事態宣言を行えば、内閣は国会での事前承認なしに財政措置などをとることができるようになる条項だ。

とくに自民党が強調しているのは、東日本大震災発生時の対応。この緊急事態条項があれば、今後、大きな災害が起こっても、迅速に対応することが可能になる、というのが彼らの言い分だ。──頻発している火山の噴火や、先日の水害、首都直下地震南海トラフ地震への懸念が高まるいま、「そりゃあったほうがいい」と納得してしまう人も多いだろう。

ところが、こうした喧伝はまやかしに過ぎない。事実、自民党が発表している「日本国憲法改正草案」の当該箇所には、こんなことが書かれている。

《(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。》

 一目瞭然、自然災害が出てくるのは3番目だ。主たる目的は、外部からの武力攻撃への対応であり、重要なのは「内乱等による社会秩序の混乱」に対する措置。要は、明治憲法下での戒厳令を復活させようとしているのだ。

 この草案によると、緊急事態宣言は事後に国会の承認を得なければならないということになっている。事後承認でいいというのは事実上、やりたい放題ということだ。では、実際に緊急事態宣言が出るとどうなるのか。

《(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対しても必要な指示をすることができる。》

 つまり、政権は国会の事後承認で好き勝手に法律をつくり税金も自由に使えることになる。しかも、通常は国と対等な関係にある地方自治体の長も指揮下における。具体的には、尖閣諸島に中国の漁民が武装上陸しようとしていることを理由に緊急事態を宣言すれば、国の方針に従わない沖縄県知事に命令する立場になれる、というわけだ。そして自民党草案には、こんなことも書かれている。

《3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。》

 緊急事態宣言さえ出してしまえば、何人も国の指示に従わなければならないということになる。さらにダメ押しで、こうも書いている。

《この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限尊重されなければならない。》

 14条は法の下の平等、18条は身体の拘束と苦役からの自由、19条は思想と良心の自由、21条は表現の自由だ。一見、人権尊重の文言に読めるが、よくよく考えると、この人類普遍の権利でさえ「最大限尊重」(厳守ではない)程度でOKなのだ。

 緊急事態条項の“狙い”がこれでおわかりいただけただろう。「災害が起こったらすばやく対応できるよ!」という触れ込みは、結局、緊急事態条項の本質を隠すカモフラージュ。この条項を憲法に加える真の目的は、明治憲法下の戒厳令の復活であり、緊急事態を口実にした国民の権利の抑制であり、言うことを聞かない地方を国に従わせるということなのだ。